山奥深くにあるバローチ遊牧民たちの村。
食器の洗い物をしに、少女たちが村の外へ出て来た。
谷底の川の水を、町から持って来た管とポンプを使って村の近くまで送っている。
洗いものをしている向こうでは、バロチスタンの乾いた大地でもよく育つ、タロクと呼ばれる硬い植物の葉を編んでつくった丸いドーム状の家々が並んでいる。
これはバローチの中でも、遊牧民の人々だけがつくる家だ。
人里離れた静かな山の中には、こういった村が他にもいくつか点在しているようだった。
まわりは岩山ばかりで、空気の音と動物たちの鳴き声が時々響く、静かな世界。
夕日も沈む少し前。周囲も少しずつ暗くなり始めていた。その中で、ゴシゴシと音を立てながら、食事前に手を洗うときに使う水差しをていねいに磨く少女の表情は、一際輝いて見えた。